『サウルの息子』を観た
サウルの息子
2015年・第68回カンヌ国際映画祭でグランプリ、第88回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したハンガリー映画。アウシュビッツ解放70周年を記念し て製作され、強制収容所で死体処理に従事するユダヤ人のサウルが、息子の遺体を見つけ、ユダヤ教の教義に基づき葬ろうとする姿や、大量殺戮が行われていた 収容所の実態を描いた。
1944年10月、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所。ナチスにより、同胞であるユダヤ人の死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマン ドに選抜されたハンガリー系ユダヤ人のサウル。ある日、ガス室で生き残った息子と思しき少年を発見したものの、少年はすぐにナチスによって処刑されてしま う。サウルは少年の遺体をなんとかして手厚く葬ろうとするが……。
- 制作
- 2015年(ハンガリー)
- 監督
- ネメシュ・ラースロー
- 主演
- ルーリグ・ゲーザ
感想
ライムスター宇多丸のラジオで知って、福岡で上映されるのを心待ちにしていました。(感想も被る部分多数あり!)
土曜日のKBCシネマのレイトショーでしたが、なかなかの客入り。
撮り方
まず、映像の撮り方が特殊ですね。
POV方式(主観映像)を使って撮影されていて、物語の当事者のような感覚で観れます。
さらに、もともと昔の映画みたいに狭い比率の画面なのに、画面のほとんどをサウルの顔や後頭部が占めていて、残りのほとんどが一眼レフの写真みたいにボヤけています。その中に人の死体が無造作に積み上げられていたりするんですが、ただの背景のようなあまりの無造作ぶりに、余計しっかり目に焼き付いてしまいます。
ストーリー
冒頭のガス室のシーンから、本当にわけが分からないまま話がどんどん進んでいきます。自分が今何をしているのか、この作業はいったい何なのか、このままどこへ連れて行かれるのか。
このあたりの感覚が本当に凄くて、怖くて、4DXかのような体感型映画です。
息子
サウルの身勝手な行動が、この映画の票の分かれ目な気がしますが、そもそもあの”少年”は本当に”息子”だったのか?
「お前に息子はいない」というセリフなどからして、本当の息子ではない気がします。
あの少年こそがサウルにとって”人間の尊厳”であって”人としているための最終ライン”だったのではと思います。マクガフィンってやつですね。
キャッチコピーの”最期まで<人間>であり続けるためにー”
そう考えれば身勝手な行動もなんとなく分かる気が……
サウルの微笑
あと、ラストシーンのサウルの微笑。あの微笑の意味、すごい意見分かれそうですよね。
作中、唯一の笑顔。これがすごく辛いです。
私は”少年”が無事成仏できたことに対する笑みかと思ったんですが、まず幽霊ではなく地元の少年説もあり、もうずっと考えてるけど分からない!
でも、こういう終わり方、嫌いじゃないです!
映画評論家・町山智浩氏のブログを読んで理解が深まった部分も。
『サウルの息子』の息子とラストについて - 映画評論家町山智浩アメリカ日記
アウシュビッツ内の写真や出来事の記事を、文字通り命を懸けて残すように、少年をちゃんと埋葬することで転生し後世に伝える(ユダヤ教は転生を信じる宗教)。そういった意味合いがあるのではないかということ。
ただこれだと、少年を部屋に連れてきたときに「記事を書いてることバラすぞ」みたいな脅ししますかね?
あと、サウルの微笑は、最後の少年は地元の子供で、見られたことで「これで外の世界の人にも情報を伝えれる」ということ。なるほど!
しかしこれだと、ドイツ兵普通に見逃してたけど、見逃しますかね?
とかとか、やっぱりいろんな意見があって面白いですね。
まとめ
観終わった後、一時何もしたくなくなるくらい衝撃を受けますが、本当に多くの人に観てもらいたい作品です。
歴史的事実という点でもですが、映画としてもすごく良くできた作品だと思います。
フィクションだけどノンフィクション。
現段階で2016年ベスト1! 間違いなく歴史に残る作品だと思います。
恥ずかしながら、ホロコースト物で有名な『シンドラーのリスト』とか『ライフイズビューティフル』とかしっかり観れてないので、これを機に観てみようと思いました。
観てきた。良い悪いは抜きにして、観るべき映画。これが現実に起こっていた事とは。#サウルの息子 #sonofsaul
はぁーなんか映画ひきずって何もしたくない。
— 84 (@getup84) March 5, 2016
【映画パンフレット】 サウルの息子 監督 ネメシュ・ラースロー キャスト ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン 第68回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞
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